体内時計とは?睡眠との関係と体内時計を整えるためのポイントを解説
「体内時計ってたまに聞くけど、どんなはたらきをするのかな?」
「体内時計と睡眠にはどんな関係があるんだろう?」
体内時計という言葉は知っていても、そのはたらきまではご存じない方もいらっしゃるかもしれませんね。
体内時計とはほぼ1日の周期で体内環境を積極的に変化させる機能のことです[1]。
体内時計が正常にはたらくことは、規則正しい睡眠をとる上でとても重要です。
また、体内時計は体温の調整やホルモンの分泌など、さまざまな生理的反応のリズムをつかさどっています。
そのため体内時計が乱れると睡眠のリズムに狂いが生じたり、集中力が低下したりします。
また肥満や高血圧、糖尿病などの原因にもなるため注意が必要です。
この記事では体内時計と睡眠の関係、体内時計の乱れによる悪影響を解説します。
体内時計を整えるためのポイントもご紹介するので、ぜひ参考にしてくださいね。
[1] 厚生労働省 e-ヘルスネット「体内時計」
1.体内時計とは
体内時計は、ヒトを含む哺乳類では脳の視床下部にある視交叉上核に存在します。
体内時計とは地球の自転による昼夜変化に同調し、ほぼ1日の周期で体内環境を変化させる機能です[2]。
この約24時間の周期は「概日リズム(サーカディアンリズム)と呼ばれます。
ヒトの体温調整やホルモンの分泌、血圧の変化といった生理的な反応は、約24時間周期で変化しています[2]。
光や温度の変化のない空間にいる場合でも、体内環境は体内時計のはたらきにより概日リズムに合わせて変化します。
体内時計は周囲の環境に変化がなくても自立的に機能し、体内環境を変化させるのですね。
[2] 厚生労働省 e-ヘルスネット「体内時計」
2.体内時計と睡眠の関係
体内時計は睡眠・覚醒のリズムを調整しています。
体内時計は体温などをつかさどる「自律神経」やホルモンの分泌などを調整することで、前もって睡眠に備えています。
例えばヒトが起床してから13時間ほどたつと睡眠ホルモンと呼ばれる「メラトニン」が分泌され、体が休息に適した状態になって眠気を感じます[3]。
体内時計によるこうしたはたらきは、自分の意思でコントロールすることができません。
体内時計が正常にはたらいているからこそヒトは朝に目覚め、夜に眠ることができるのです。
[3] 文部科学省「第3章 健康なくらしに寄与する光 2 光の治療的応用―光による生体リズム調節―」
3.体内時計の乱れによる悪影響
「体内時計が乱れるとどうなるのかな?」
ヒトの体内時計の周期には個人差がありますが、一般的に24時間より長いといわれています。
以前は25時間といわれていましたが[4]、国内の研究では24時間10分という研究結果もあります[5]。
ヒトは日常生活におけるさまざまな刺激(同調因子)によって、地球の1日の周期とのずれを修正しています[4]。
同調因子のなかで最も強いのが光です。
そのため夜遅くまで起きて明るい光を浴びていたり、朝に遅くまで寝ていて光に当たるのが遅れたりすると、体内時計が乱れてしまいます。
他には食事や運動、仕事、学校といった社会生活も同調因子としてはたらきます。
深夜に食事を摂ったり交代勤務で夜中に働いたりすることでも体内時計が乱れることがあります。
この章では体内時計の乱れによる悪影響を五つご紹介します。
[4] 厚生労働省 e-ヘルスネット「概日リズム睡眠障害」
[5] Shingo Kitamura, Akiko Hida, Minori Enomoto, Makiko Watanabe, Yasuko Katayose, Kentaro Nozaki, Sayaka Aritake, Shigekazu Higuchi, Yoshiya Moriguchi, Yuichi Kamei, Kazuo Mishima「Intrinsic circadian period of sighted patients with circadian rhythm sleep disorder, free-running type」(Biol Psychiatry . 2013 Jan 1;73(1):63-9.)」
[6] 厚生労働省 e-ヘルスネット「体内時計」
3-1.睡眠リズムの乱れ
体内時計の乱れを修正できないと眠りたい時刻に眠れず、起きたい時刻に起きることができなくなってしまいます。
また無理に目を覚ましたとしても体調が優れず、眠気や頭痛、倦怠(けんたい)感、食欲不振などの不調に見舞われます。
このように体内時計の乱れをリセットできないために生じる睡眠障害を「概日リズム睡眠障害」といいます。
短時間で時差のある外国に移動することで起こる「時差症候群」、いわゆる時差ぼけも概日リズム睡眠障害の一種です。
時差ぼけのように人為的・社会的な事情によって起こる睡眠障害としては、交代勤務(シフト勤務)のために睡眠時間帯が頻繁に変わり、睡眠リズムが乱れる「交代勤務睡眠障害」があります。
また体内時計の同調機能自体に問題がある場合にもさまざまな睡眠障害が現れます。
例えば「睡眠相後退症候群」は深夜にならないと眠れず、昼頃まで起きられなくなる睡眠障害です。
逆に夕方になると眠ってしまい、早朝に目が覚める「睡眠相前進症候群」というものもあります。
さらに寝付く時間が毎日30〜60分ずつ遅れていく「非24時間睡眠覚醒症候群」[7]、睡眠に一定のリズムがなくなってしまう「不規則睡眠覚醒リズム障害」といった睡眠障害も存在します。
体内時計が正常に機能しているからこそ、睡眠の正常なリズムを保つことができるのですね。
[7] 厚生労働省 e-ヘルスネット「非24時間睡眠覚醒症候群」
3-2.集中力の低下
体内時計が乱れると、集中力が低下するといわれています。
これは、本来起きるべき時間にまだ体内時計が睡眠モードになっているために起こります。
この状態では体や脳がしっかり目覚めていないため、集中力が低下するのです。
集中力の低下はケアレスミスや作業効率の悪化にもつながるため、注意が必要です。
睡眠のリズムを乱さず、日中の集中力をキープするためにも規則正しい生活を心掛けましょう。
3-3.肥満
体内時計に合わない時間帯に食事を摂ると太りやすいといわれています。
体内時計の乱れによって生活のリズムが狂うと、不眠や肥満などの症状が現れやすくなります。
まず体内時計が乱れて不眠になったり、睡眠の質が低下したりすると、食欲を抑えるホルモンの分泌が減少し、食欲を高めるホルモンの分泌が盛んになります。
食欲が高まれば肥満のリスクが高まります。
また夜間には「時計遺伝子」の一つである「BMAL1(ビーマルワン)遺伝子」が活性化します。
BMAL1には脂肪を蓄積し、その分解を抑える作用があるため、夜間に摂った食事は脂肪に変換されやすいのです。
「夜食べると太る」という通説には体内時計のはたらきという科学的な裏付けがあったのですね。
3-4.糖尿病の発症
肥満は「糖尿病」の主な原因の一つとされているため、体内時計が乱れると糖尿病のリスクが高まります。
また、不眠でストレスがかかると交感神経が活発になり、血糖を上昇させるホルモンがはたらき、血糖値が上昇しやすくなります。
自覚症状がないまま進行し、心臓病や脳卒中のリスクを高めるのが糖尿病の怖いところです。
糖尿病のリスクを下げるためにも、体内時計をきちんと整えることが重要です。
3-5.高血圧
体内時計の乱れは高血圧につながることもあります。
体内時計は「自律神経」のはたらきも調整しています。
自律神経は1日の血圧の変化もコントロールしています。
そのため体内時計が乱れると血圧の値にも異常が現れることがあります。
通常、就寝中は1日のなかで最も血圧が低く、目覚めてから日中にかけて上昇し、夕方から夜にかけて下がります。
しかし、体内時計が乱れると日中に血圧が十分に上がらなかったり、逆に夜になると血圧が上昇してしまったりするのです。
いずれも通常の場合と比べて夜間の血圧が高くなるため、心筋梗塞や脳梗塞のリスクが高まるといわれています。
4.体内時計を整えるためのポイント
「体内時計を整えるにはどうすれば良いんだろう?」
体内時計は工夫次第で整えることができます。
この章では体内時計を整えるためのポイントを七つご紹介します。
ポイント1 朝起きたら日の光を浴びる
体内時計を整えるには朝起きたら日の光を浴びることが重要です。
ヒトの体内時計の周期は地球の自転周期より一般的に長い傾向にあります。
この周期のずれは、日常生活においてさまざまな刺激(同調因子)を受けることで修正されます。
同調因子としてはたらく刺激には食事や運動などの身体的刺激の他、仕事や学校などの社会活動があります。
同調因子のなかでも最も強力なのは光です。
特に朝の光には体内時計を早めてずれを修正するはたらきがあります。
また昼の光にも昼夜のメリハリをつける作用があるため、昼間に明るい光を浴びておくと、夜間に眠気を発するメラトニンというホルモンが多く分泌されます。
光は睡眠のリズムを決定する重要な要素の一つなのですね。
ポイント2 規則正しく食事を摂る
規則正しく食事を摂ることは体内時計を整えることにつながります。
朝食は同調因子として体内時計のずれを修正してくれます。
このため朝食は抜かないようにしましょう。
またマウスを使った実験では普段眠っている時間に食事を摂り続けると、食事の時間に合わせて脳や肝臓の「抹消時計」がずれてしまうことが分かっています。
このため夕食後から翌日の朝食まではできるだけ食べ物を口にしないようにしましょう。
食事はただ摂れば良いわけではなく、摂る時間帯にも気を配る必要があるのですね。
ポイント3 適度に運動する
適度な運動は体内時計を整えてくれます。
運動は体内時計の同調因子の一つです。
習慣的に運動をしている方は不眠が少ないというデータもあります。
睡眠に悪影響が出ると体内時計が乱れる場合もあるため、運動習慣を付けてしっかり眠ることが重要なのですね。
ただし激しい運動はかえって睡眠を妨げることがあるので、ウォーキングやジョギングなど、負担が少なく長続きしやすい「有酸素運動」がおすすめです。
運動をする時間にも気を配るとなお良いでしょう。
就寝3時間前に運動をすると、心地良い眠りに就きやすいといわれています[8]。
運動をすると一時的に脳の温度が上がりますが、就寝3時間前に運動をすると、ちょうど寝床に就くタイミングで脳の温度の低下量が大きくなります[8]。
眠気は脳の温度の低下量が大きいときに生じやすいため、スムーズに眠りに就けるのです。
なお就寝直前に運動をすると体が覚醒状態になってしまい、眠りに就きにくくなるので注意してくださいね。
[8] 厚生労働省 e-ヘルスネット「快眠と生活習慣」
ポイント4 夜に強い光を浴びない
体内時計を整えるには夜に強い光を浴びないことが重要です。
朝に浴びる光とは逆に、夜に浴びる光は体内時計を遅らせます。
家庭の照明でも長時間浴びると体内時計が遅れることが分かっています。
ちなみに白っぽい蛍光灯より赤みを帯びた暖色系の蛍光灯の方が、体内時計に与える影響は少ないといわれています。
またスマートフォン(スマホ)やパソコンのディスプレイのブルーライトも体内時計を遅らせます。
寝付きが悪くなるので、寝る前の使用はできるだけ避けましょう。
ポイント5 湯船につかる
湯船につかると入眠が促されるため、体内時計を整える助けになります。
就寝の2〜3時間前に入浴すると、一時的に上がった体温が床に就く頃に体温の下がり幅が大きくなり、眠気が生じやすくなります[9]。
体温の変化を利用して入眠を促す仕組みは運動と同じですね。
湯船につかる時間は38度のぬるめのお湯なら25〜30分程度、42度の熱めのお湯なら5分程度で良いとされています[9]。
半身浴の場合は約40度のお湯で30分ほど入浴すると良いでしょう[9]。
お湯の温度が高過ぎると体への負担が大きくなるためおすすめできませんが、そうでなければ自分の好みや体調に合った方法を選んで構いません。
[9] 厚生労働省 e-ヘルスネット「快眠と生活習慣」
ポイント6 就寝前のカフェイン摂取を避ける
カフェインには覚醒作用があるため、就寝前の摂取は避けましょう。
なかなか寝付けずに就寝時間がずれれば、体内時計にも狂いが生じます。
カフェインはコーヒーやお茶、エナジードリンクなどに含まれる成分の一種です。
カフェインの効果が切れるまでの時間には個人差がありますが、敏感な方は寝る5〜6時間前から控えた方が良いでしょう[10]。
[10] 厚生労働省 e-ヘルスネット「快眠と生活習慣」
ポイント7 就寝前のアルコール摂取・喫煙を避ける
就寝前のアルコールの摂取、喫煙は控えましょう。
アルコールは寝付きを良くするものの、明け方の睡眠を妨げます。
さらにトイレが近くなるため、夜中や早朝に目が覚めてしまう原因になります。
またたばこに含まれるニコチンには覚醒作用があります。
そのため睡眠の質を維持し、体内時計を整えるには摂取するタイミングを考えることが重要です。
5.睡眠に問題を感じる場合は医療機関に相談しよう
体内時計が乱れると夜に眠れない、朝に起きられないといった睡眠の問題が生じることがあります。
睡眠に問題を感じている場合は内科、心療内科、精神科などの受診をおすすめします。
成人の睡眠時間は1日当たり6〜8時間が適正とされていますが、これには個人差があります[11]。
そのため日中に眠気を感じず、しっかり休めている感覚が得られているかどうかを一つの目安にすると良いでしょう。
睡眠障害については以下の記事で詳しく解説しています。
日中襲ってくる眠気の原因と対策を解説!睡眠障害の可能性もあり?
[11] 厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」
6.体内時計についてのまとめ
体内時計とはほぼ1日の周期で体内環境を積極的に変化させる機能のことです[12]。
私たちが朝に目覚め、夜に眠ることができるのは、体内時計が睡眠と覚醒のリズムを調整しているためです。
ヒトの体内時計は24時間より周期が長く、地球の自転とはずれがあります。
何らかの理由でこのずれを修正できない状態が続くと、睡眠リズムが乱れるだけでなく、集中力の低下や肥満、高血圧、糖尿病などの原因になります。
体内時計を整えるには朝に光を浴びたり、規則正しい食事を心掛けたりする必要があります。
運動や入浴などの習慣を見直すだけでも、体内時計を整えることができますよ。
就寝前のスマホ操作や、カフェインやアルコールの摂取、喫煙などは睡眠の質を下げ、体内時計が乱れる原因となるため注意が必要です。
また体内時計の乱れで睡眠や生活に問題が生じたときは内科、心療内科、精神科などを受診しましょう。
[12] 厚生労働省 e-ヘルスネット「体内時計」