睡眠障害とは?代表的な病気の特徴や症状、原因、治療法を解説
「睡眠障害ってどんな病気なんだろう?」
「ちゃんと眠れないのは睡眠障害だからなのかな……」
睡眠障害という言葉を聞いたことはあっても、どんな病気なのか詳しく知らないという方は多いでしょう。
睡眠障害は睡眠に関連する多くの病気の総称です。
睡眠障害には不眠症や睡眠時無呼吸症候群のように広く名前の知られた病気もあれば、「反復性過眠」症のような極めてまれな病気もあります。
この記事では代表的な睡眠障害について特徴や症状、原因、治療法を詳しく解説します。
ご自身が睡眠障害に該当するかどうか気になっている方はぜひ参考にしてくださいね。
1.睡眠障害とは
睡眠障害とは、睡眠に関連する60種類以上の病気の総称です[1]。
米睡眠学会が定めた睡眠障害国際分類第3版(ICSD-3)では、睡眠障害は大きく七つに分類されます。
【睡眠障害国際分類による睡眠障害の分類】
- 不眠症
- 過眠症
- 概日リズム睡眠覚醒障害
- 睡眠関連呼吸障害
- 睡眠関連運動障害
- 睡眠時随伴症
- その他の睡眠障害
睡眠障害というと不眠症を想像する方も多いかもしれませんね。
実際に不眠症は睡眠障害のなかでも最も患う人の多い病気ですが[2]、別の病気が原因で十分な睡眠がとれていない可能性もあります。
睡眠障害の治療法は病気によって異なるため、医療機関を受診することが重要です。
睡眠障害は日中の生活に悪影響を及ぼし、心身の健康にも影響します。
事故やヒューマンエラーの原因となり、うつ病などの精神疾患や生活習慣病のリスクを上昇させる場合があります。
睡眠障害の治療は単によく眠れるようになるというだけでなく、日常生活や健康状態の改善にもつながるといえるでしょう。
この記事では不眠症、過眠症、概日リズム睡眠覚醒障害、睡眠関連呼吸障害、睡眠関連運動障害、睡眠時随伴症について、それぞれの特徴や症状、原因、治療法を解説します。
[1] 国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所睡眠・覚醒障害研究部「睡眠障害国際分類(ICSD-3:2013年)」
[2] 厚生労働省 e-ヘルスネット「睡眠障害」
2.代表的な睡眠障害の特徴・症状
「睡眠障害になるとどんな症状が現れるのかな?」
睡眠障害はそれぞれの病気に現れる特徴や症状が異なります。
この章では不眠症、過眠症、概日リズム睡眠覚醒障害、睡眠関連呼吸障害、睡眠関連運動障害、睡眠時随伴症に分類される代表的な睡眠障害の特徴や症状を解説します。
睡眠に問題があると感じている方は、ご自身の状況と照らし合わせてみてくださいね。
2-1.不眠症の特徴・症状
不眠症とは、夜間の不眠が続くことによって日中に心身が不調になり生活に支障が出てしまう病気です。
眠ろうとして眠れないことは誰にでもあります。
しかし十分に眠れない状態が長期間続くと、意欲や集中力の低下、倦怠(けんたい)感、目まい、食欲不振といった症状が現れ、仕事の効率や生活の質が低下する場合があります。
単に眠れないというだけでなく、眠れないことで日中の生活や心身の健康に悪影響を及ぼした場合に不眠症と診断されます。
なかでも眠れない状態が週に3日以上、3カ月以上続く場合は治療の必要な「慢性不眠症」の可能性があります[3]。
不眠症は大きく四つのタイプに分けられます[4]。
【不眠症のタイプ】
- 入眠障害:寝床に就いてから眠るまでに長い時間がかかる
- 中途覚醒:就寝中に何度も目が覚めてしまう
- 早朝覚醒:起きる予定の時間よりもずっと早く目が覚める
- 熟眠障害:睡眠時間は足りているのに眠りが浅く寝た気がしない
寝付きが悪い方はもちろん、夜中に目が覚めやすい方、朝早く目が覚めてしまう方、睡眠時間にかかわらず寝た気がしないという方も不眠症の可能性があります。
日本では成人の30~40%が不眠の症状を示し、約10%が慢性不眠症だといわれています[5]。
また不眠の症状を示す人は加齢に伴って増え、60歳以上では半数以上に及びます[5]。
不眠症は誰もがかかり得る病気だといえるでしょう。
[3] 国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所睡眠・覚醒障害研究部「不眠症(Insomnia)」
[4] 日本臨床内科医会「不眠症」
[5] 厚生労働省 e-ヘルスネット「不眠症」
2-2.過眠症の特徴・症状
過眠症は夜間にしっかり眠れているのに日中に極めて強い眠気が生じ、起きていることが困難になる病気です。
過眠症には「ナルコレプシー」「特発性過眠症」「反復性過眠症」があります。
ナルコレプシーは耐えられないほど強い眠気と、食事中や歩行中といった、通常では眠らない状況での居眠りを特徴とする慢性的な睡眠障害です。
これらの症状により日常生活が著しく妨げられる他、転倒や転落、交通事故などのリスクが増加します。
ナルコレプシーの居眠りは数分から十数分程度と短く、覚醒時にすっきりとした感覚を伴うことが特徴です[6]。
また笑う、驚く、怒るといった強い感情に伴って一時的に脱力する「カタプレキシー(情動脱力発作)」という発作が起こる場合があります。
カタプレキシーは数秒から数分で自然に回復しますが、床にへたり込むほど力が抜けてしまう場合もあります[6]。
加えてナルコレプシーでは寝入りばなに金縛りにあう、幻覚を見る、現実と区別のつかない夢を見るといった症状も知られています。
患者の多くは思春期に発症し、長期間持続します。
特発性過眠症は日中の極めて強い眠気と居眠りを特徴とする睡眠障害です。
特発性過眠症の居眠りは1時間以上続くことが多く、覚醒時にすっきりとした感覚が乏しいことが特徴です[6]。
ナルコレプシーと違ってカタプレキシーは見られず、金縛りや幻覚などの頻度も低いといわれています。
特発性過眠症は睡眠時間が10時間以上と長い場合と、通常の場合に分けられます[6]。
また特発性過眠症には起きづらさや頭痛、失神などの自律神経症状を伴うことがあります。
特発性過眠症の発症時期を特定することは難しく、また症状は長時間持続します。
反復性過眠症は過剰な眠気が数日から数週間続き、その間1日のほとんどを寝て過ごしてしまう極めてまれな病気です。
この過眠の症状は年に数回から多い場合は10回以上不定期に起こります[6]。
過眠の症状が出ている時期は夢を見ているように現実感が失われたり、食欲や性欲が高まったりする場合があります。
反復性過眠症は10代で発症する場合が多いとされています。
[6] 国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所睡眠・覚醒障害研究部「中枢性過眠症」
2-3.概日リズム睡眠覚醒障害の特徴・症状
概日リズム睡眠覚醒障害は体内時計のリズムが地球の自転周期とうまく同調しないために睡眠と覚醒のタイミングが乱れる病気です。
概日リズム睡眠覚醒障害は「睡眠・覚醒相後退症候群」「睡眠・覚醒相前進症候群」「不規則睡眠・覚醒リズム障害」「非24時間睡眠・覚醒リズム障害」「交代勤務睡眠障害」「時差障害」に分類されます。
睡眠・覚醒相後退症候群は極端な遅寝と朝寝を特徴とします。
明け方近くまで寝付けない上、いったん眠ると昼過ぎまで目が覚めないといった状態になります。
無理をして起床しても眠気や強い倦怠感などの体調不良が生じます。
一方、睡眠・覚醒相前進症候群は極端な早寝と早起きが特徴です。
夕方から夜の早い時間に眠くなってしまい、早朝には目が覚めてしまいます。
家族や友人と生活時間が乖離(かいり)し、苦痛を感じたり社会生活に影響が及んだりしてしまいます。
また、不規則睡眠・覚醒リズム障害では睡眠と覚醒のリズムが不規則になります。
1日のなかで睡眠と覚醒が不規則に現れ、夜間に長時間の睡眠ができなくなると同時に日中に眠気が生じ、居眠りを繰り返します。
非24時間睡眠・覚醒リズム障害では毎日30分~1時間程度、睡眠と覚醒リズムが遅れていきます[8]。
これはヒトの体内時計を地球の自転周期に合わせてリセットする同調機能が何らかの理由で損なわれた状態だと考えられています。
交代勤務睡眠障害は夜勤やシフト制勤務などの不規則な勤務のある人に見られます。
仕事のスケジュールに体内時計のリズムを合わせられず、夜間の不眠や日中の眠気に加え、仕事の効率低下、倦怠感、食欲不振といった悪影響が生じます。
時差障害はいわゆる時差ぼけとして知られるものです。
時差のある海外に渡航した際に体内時計のリズムと昼夜のタイミングがずれ、眠気や頭痛、倦怠感、食欲不振、不眠といった症状が現れます。
[7] 文部科学省「家庭で・地域で・学校でみんなで早寝早起き朝ごはん-子どもの生活リズム向上ハンドブック-(平成19年度)第2章 生活リズムの確立と睡眠」
[8] 国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所睡眠・覚醒障害研究部「概日リズム睡眠・覚醒障害(CRSWD)」
2-4.睡眠関連呼吸障害の特徴・症状
睡眠関連呼吸障害は眠っている間に何度も呼吸が停止したり、浅くなったりする病気の総称です。
血液中の酸素が不足するため深刻な健康被害が生じます。
睡眠関連呼吸障害の代表例として挙げられるのが睡眠時無呼吸症候群です。
睡眠時無呼吸症候群では呼吸が停止したり浅くなったりするために眠りが浅くなり、日中に強い眠気や居眠り、疲労感、頭痛などが生じます。
これにより事故やミスを引き起こしてしまう可能性が高まります。
また睡眠中に大きないびきやあえぐような呼吸、窒息感、夜間頻尿などが見られるのも特徴です。
さらに睡眠時無呼吸症候群は高血圧、糖尿病といった生活習慣病の発症・悪化や、「動脈硬化」の進行のリスクを高めることでも知られています。
なお、睡眠時無呼吸症候群は原因により「閉塞(へいそく)性睡眠時無呼吸症候群」と「中枢性睡眠時無呼吸症候群」に分けられます。
閉塞性睡眠時無呼吸症候群は舌や喉の筋肉が睡眠中に弛緩(しかん)し、気道を圧迫したりふさいだりすることで起こり、肥満の人に多く見られます。
一方、中枢性睡眠時無呼吸症候群は睡眠中に呼吸を調節する脳のシステムにエラーが生じることで起こります。
いずれも症状は同じです。
[9] 厚生労働省 e-ヘルスネット「睡眠時無呼吸症候群 / SAS」
[10] 厚生労働省 e-ヘルスネット「昼間の眠気 -睡眠時無呼吸症候群・ナルコレプシーなどの過眠症は治療が必要」
2-5.睡眠関連運動障害の特徴・症状
睡眠関連運動障害は睡眠中や睡眠の前後に不快な感覚が生じたり体がびくびく動いたりすることで睡眠が妨げられる病気です。
睡眠関連運動障害には「むずむず脚症候群」と「周期性四肢運動障害」があります。
むずむず脚症候群では夕方から夜間にかけて脚がむずむずする、痛い、かゆい、虫がはっているように感じるといった不快な感覚が出現します。
これらの症状は脚を動かしたり不快な感覚のある部位を刺激したりすることで和らぎますが、安静にしていると再び症状が生じ、睡眠が妨げられて強い苦痛を感じます。
周期性四肢運動障害は睡眠中に手足の筋肉が無意識のうちにびくびく動いて目が覚めてしまいます。
中途覚醒が増えることで深い眠りが妨げられ、日中に強い眠気や倦怠感を覚える場合があります。
2-6.睡眠時随伴症の特徴・症状
睡眠時随伴症は、睡眠中に起こる異常な行動や体験を特徴とする望ましくない現象の総称です。
睡眠時随伴症の代表的な症例には「夜驚症」「睡眠時遊行症」「悪夢障害」「レム睡眠行動障害」があります。
夜驚症は睡眠中に悲鳴や泣き声を上げる現象です。
寝ぼけた状態のまま起き上がって腕を振り回すなど錯乱状態に陥る場合もあります。
主に小児期に現れ、多くは思春期の頃には落ち着きます。
睡眠時遊行症は睡眠中に寝床を出て歩き回ったり、ときに走り出したりする現象です。
夢遊病とも呼ばれ、歩きながらぶつぶつとつぶやいたり障害物にぶつかったりすることもあります。
こちらも主に小児期に現れ、多くは思春期の頃には落ち着きます。
悪夢障害は睡眠中に鮮やかで生々しい夢を見て、強い不安や恐怖で飛び起きることを繰り返すものです。
悪夢自体は誰でも見るものですが、長期間にわたって繰り返され、睡眠が妨げられる場合は悪夢障害に該当する可能性があります。
悪夢の内容を鮮明に思い出せることが大きな特徴です。
小児期に現れて思春期に落ち着くことが多いとされますが、成人にも見られます。
レム睡眠行動障害はレム睡眠中の夢が行動となって現れてしまう病気です。
睡眠中に突然大声の寝言や奇声を発する、手足をばたつかせたり隣で寝ている人をたたいたりするといった暴力的な行為を行うという特徴があります。
このため本人や周囲の人がけがをするケースがあります。
声をかけると比較的容易に覚醒し、見ていた夢の内容を詳しく思い出せることも特徴です。
主に中年以降の男性に多く、加齢とともに増えるとされています。
3.代表的な睡眠障害の原因
「どうして睡眠障害になるんだろう?」
睡眠障害の原因は病気によって違います。
日々の生活習慣が原因となるものもあれば、詳しい原因が分からないものもあります。
この章では代表的な睡眠障害の原因について解説します。
3-1.不眠症の原因
不眠症の原因には心身の不調から生活習慣、部屋の環境までさまざまなものがあります。
一般社団法人日本臨床内科医会によると、不眠の原因は大きく以下の五つに分けられます。
【不眠症の原因】
- 生理的な要因
- 心理的な要因
- 薬理学的な要因
- 身体的な要因
- 精神医学的な要因
一般社団法人日本臨床内科医会「不眠症」をもとに執筆者作成
生理的な要因とは生活習慣や眠る環境のことです。
就寝や起床の時間がばらばらである、夜勤やシフト勤務、試験勉強などで昼夜が逆転しているといった場合が当てはまります。
また寝室の温度や湿度が快適ではない、枕などの寝具が合っていない、照明が明る過ぎる、自動車の音がうるさいといった就寝環境が悪い場合も該当します。
心理的な要因は不安や心配などの心理的なストレスです。
主な例としては仕事での不安やストレス、人間関係での悩み事、家族や親しい友人の死によるショックなどがあります。
また旅行やデートなどの楽しいイベントの前にわくわくして眠れない場合も当てはまります。
薬理学的な要因は薬品や嗜好(しこう)品に含まれる刺激物を指します。
コーヒーやお茶に含まれるカフェイン、アルコール、ニコチンなどは睡眠を妨げる刺激物です。
またステロイド薬やパーキンソン病の薬、抗がん剤や抗ウイルス薬として用いられる「インターフェロン」などの服用によって眠れなくなることがあります。
身体的な要因は痛みやかゆみ、せき、鼻づまり、頻尿といった、何らかの病気や症状です。
例としては外傷や関節リウマチなどによる痛み、湿疹やじんましんなどによるかゆみ、ぜんそく発作によるせき、花粉症や風邪による鼻づまり、夜間の頻尿などが挙げられます。
精神医学的な要因とは心の病です。
神経症やうつ病、統合失調症などの精神疾患が理由で眠れなくなることがあります。
3-2.過眠症の原因
過眠症の原因は中枢神経系の機能異常であるとされています。
昼間に突然眠ってしまう病態から「いいかげんだ」「怠け者」などと攻撃されたり社会的に低い評価をされたりするケースもありますが、性格や態度の問題ではありません。
ナルコレプシーは覚醒状態を保つために必要な神経ペプチドの「オレキシン」をつくる神経細胞の変性や脱落が原因であると考えられています。
一方で突発性過眠症の原因はよく分かっていません。
睡眠と覚醒に関わる何らかの遺伝子が関係しているのではないかと考えられています。
また反復性過眠症の原因もまだ解明されていません。
過眠の症状が出る時期には脳を覚醒させるオレキシンの濃度が低下していることが分かっていますが、その理由は不明です。
ただし過眠が現れる際のきっかけになっているのは心身のストレスだとする説があります。
また発症の原因として、脳の覚醒を保つ部分と睡眠をコントロールする部分のバランスが乱れることに加え、遺伝的な要因などが関係しているのではないかと考えられています。
なお日中の強い眠気や居眠りは、過眠症ではなく夜間に何らかの睡眠障害が発生した結果として生じている場合もあります。
3-3.概日リズム睡眠覚醒障害の原因
概日リズム睡眠覚醒障害の原因は体内時計のリズムが地球の自転周期にうまく同調しないことで、同調しない理由は病気によって異なります。
就寝と起床のタイミングが遅れる睡眠・覚醒相後退症候群は体内時計が遅れることによって生じます。
若者に多く、夏休みなどの長期休暇明けに出現することが多いといわれています。
反対に入眠と起床が早まる睡眠・覚醒相前進症候群は体内時計が進むことによって生じます。
高齢者に多く、加齢に伴って体内時計の機能が変化することが関係していると考えられています。
不規則睡眠・覚醒リズム障害は、病気などで体内時計をうまくリセットできなくなった人が、社会的な接触が少ない状況に置かれた場合に生じやすいとされています。
認知症やパーキンソン病などの神経変性疾患や脳梗塞、一部の遺伝疾患に伴って生じる他、発達障害のある子どもにも多く見られるといわれています。
睡眠と覚醒のリズムが徐々に後退していく非24時間睡眠・覚醒リズム障害の患者の多くは全盲者で、光が体内時計に届かないことで生じます。
視覚障害者以外では日の当たらない室内で長時間生活している方に生じるケースもありますが、原因ははっきりしていません。
交代勤務睡眠障害は夜勤やシフト制勤務などにより睡眠時間帯が頻繁に変化させられることによって生じます。
時差障害は、4~5時間以上時差のある国に飛行機で高速移動することで、出発地の明暗の周期に同調している体内時計が到着地の明暗の周期とずれるために生じます[11]。
[11] 厚生労働省 e-ヘルスネット「時差症候群」
3-4.睡眠関連呼吸障害の原因
睡眠関連呼吸障害で睡眠中の呼吸が止まる原因は病気によって異なります。
閉塞性睡眠時無呼吸症候群では睡眠中に舌や喉の筋肉が気道をふさぐことで呼吸が停止します。
その原因としては肥満で喉の周りに脂肪がついて空気の通りが悪くなることが挙げられます。
肥満の人以外でも、下顎の小さい人、へんとうの大きい人、舌の根元が気道に落ち込む舌根沈下の人は閉塞性睡眠時無呼吸症候群に陥りやすいといわれています。
また飲酒や睡眠剤の服用も喉の筋肉の緊張を緩めるため、常用されている方は注意が必要です。
中枢性睡眠時無呼吸症候群の原因は脳血管障害や心不全などによる呼吸中枢の障害だとされていますが、メカニズムはまだ解明されていません。
3-5.睡眠関連運動障害の原因
睡眠関連運動障害に分類されるむずむず脚症候群と周期性四肢運動障害の原因はよく分かっていません。
いずれの病気も鉄不足に起因する貧血や腎不全などの病気に合併して生じることが多いため、鉄不足によって「ドーパミン」産生が妨げられることが一因ではないかと考えられています。
また運動不足や喫煙、肥満も危険因子であるとされています。
3-6.睡眠時随伴症の原因
睡眠時随伴症は現象ごとに原因が異なります。
睡眠中に悲鳴のような声を上げてしまう夜驚症の原因はよく分かっていません。
疲労や睡眠不足、ストレス、環境の変化などが影響していると考えられています。
また遺伝的要素もあり、家族に夜驚症の人がいる場合に生じやすいといわれています。
加えて成人の睡眠時夜驚症には精神的な問題やアルコールの問題が関連している場合が多いとされています。
夢遊病とも呼ばれる睡眠時遊行症の原因もよく分かっていません。
睡眠時遊行症の症状が生じやすいのは、睡眠不足の場合や就寝前に目がさえるような行動をとった場合とされています。
目がさえるような行動の例としては、カフェインなどの刺激物の摂取、過度の運動、興奮するようなテレビ番組の視聴といったものが挙げられます。
また遺伝的要素やストレス、認知症、睡眠時無呼吸症候群、子どもでは脳の睡眠と覚醒をつかさどる機能が未熟であることなどが関わっていると考えられています。
悪夢障害はストレスや発熱、極度の疲労、飲酒などによって生じやすくなるといわれています。
成人の悪夢障害は「心的外傷後ストレス障害(PTSD)」やうつ病とともに生じるケースが多いことが知られています。
睡眠中に大声や奇声を発したり、暴力的な行動をとったりしてしまうレム睡眠行動障害の原因は不明な場合が多いものの、中高年の男性に多く見られることが特徴です。
また「パーキンソン病」「レビー小体型認知症」「多系統萎縮症」「アルツハイマー病」「血管性認知症」といった中枢神経系の神経疾患の人に多く見られることが知られています。
これらの神経疾患の発症の前にレム睡眠行動障害が生じる場合もあります。
加えて、レム睡眠に影響を与えるタイプの抗うつ薬が関係するケースもあるとされています。
4.代表的な睡眠障害の治療法
「睡眠障害って治るのかな?」
「睡眠障害を治療するには受診が必要なのかな……」
睡眠障害にどう対処すれば良いのか気になりますよね。
睡眠障害の多くは医療機関を受診し、医師の指導の下で適切な治療を行う必要があります。
この章ではそれぞれの睡眠障害に対してどのような治療が行われるのかを解説します。
4-1.不眠症の治療法
不眠症の治療ではまず睡眠を妨げる習慣や、眠れない際の誤った対処法を見直します。
眠れない状況が慢性化して不眠症に至る場合には、以下のような要因があるといわれています。
【不眠を慢性化させる要因】
- 寝る前の覚醒促進物質の摂取:就寝前のカフェイン、アルコール、ニコチンの摂取で睡眠が妨げられる
- 床上時間のミスマッチ:寝不足を補うために長く寝床にいることで逆に寝付きが悪くなり、眠りが浅くなる
- 日中の活動量減少:寝不足から日中の活動量が減少して寝付きが悪くなり、眠りが浅くなる
- 睡眠状態誤認:自覚している睡眠時間が実際の睡眠時間より短いために、必要以上に寝床にいることがある
また眠れなくなったきっかけのストレスに関係する出来事が続いたり、不眠を恐れて必死に眠ろうと努力したりすると、不眠が悪化する場合があります。
眠れない場合の適切な対処法については以下の記事で詳しく解説しています。
眠れないときはどうすれば良い?寝付きを良くするポイントを解説
治療ではこうしたおのおのの不眠の状況を踏まえて改善を促しつつ、主に睡眠薬を服用する薬物療法が行われます。
睡眠薬に対して「手放せなくなる」「副作用が恐い」といった心配をする方もいらっしゃいますが、正しく服用している分には過度な心配は要りませんよ。
一方で、うつ病や統合失調症といった精神疾患、病気や外傷などによる痛み、かゆみ、せき、鼻づまりなども不眠症をもたらします。
また高血圧や糖尿病、肥満などの生活習慣病や、ある種の病気の治療薬によって不眠症になる場合もあります。
これらの原因によって不眠症になった方は、もととなる病気やけがを治療したり、治療薬を調整したりする必要があります。
4-2.過眠症の治療法
過眠症の治療ではまず睡眠時間を十分に確保し、カフェインをはじめとした睡眠を妨げる物質の摂取を抑えた上で病気ごとに必要となる薬物療法を行います。
ナルコレプシーの治療では日中の過度の眠気に対しては覚醒維持薬を用います。
またカタプレキシーや金縛り、入眠時の幻覚に対しては抗うつ剤が有効です。
突発性過眠症の治療では、日中の過度の眠気に対しては覚醒維持薬を用います。
反復性過眠症の治療に特効薬はありません。
症状の頻度や重さを軽減するために「炭酸リチウム」が主に用いられますが、残念ながら患者の半数には効果は見られません。
また「双極性障害(そううつ病)」の治療で用いられる気分安定薬が有効なケースもあります。
4-3.概日リズム睡眠覚醒障害の治療法
概日リズム睡眠覚醒障害は体内時計を望ましい周期に同調させることで治療します。
この治療では主に「高照度光治療器」や、睡眠と覚醒のリズムに関わる「メラトニン」と呼ばれるホルモンが用いられます。
高照度光治療器はその名のとおり強烈な光を放つ機械です。
この装置から出力される光を朝に浴びることで体内時計のリズムを調整することが可能になります。
高照度光治療器の光が目に入ると脳に刺激が伝わり、メラトニンの分泌が整えられるのです。
同様に、睡眠と覚醒のリズムを調整するためにメラトニン自体を服用する薬物療法も用いられます。
交代勤務によって睡眠や心身に異常を来す交代勤務睡眠障害では、起きているべき時間帯に明るい光を浴びることが有効です。
また昼間に就寝する際は寝室をできるだけ暗く静かにしてアイマスクをしてみましょう。
時差のある海外に渡航した際に起こる時差障害は到着地で極力午前中に日光を浴びるようにすることで悪影響を抑えられます。
4-4.睡眠関連呼吸障害の治療法
睡眠関連呼吸障害の治療では、まず睡眠中の呼吸がどの程度停止したり浅くなったりしているかを調べる「終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)」などで重症度を確認します。
閉塞性睡眠時無呼吸症候群では、軽症の場合はマウスピースなどの「口腔(こうくう)内装置(OA)」や口テープを用いたり、傾斜枕などで睡眠中の姿勢を調整したりするといった対策を行います。
中等症や重症の場合は「経鼻的気道持続陽圧呼吸療法(CPAP療法)」による治療が行われます。
これは鼻にマスクを付け、特殊な装置で圧力をかけた空気を送り込み続けることで気道の閉塞を防ぐ治療法です。
また気道を広げるために、鼻の奥の「アデノイド」という部位や喉の奥のへんとうという部位を外科手術で切除する場合もあります。
睡眠時無呼吸症候群では、程度にかかわらず生活習慣の見直しも必要となります。
肥満は閉塞性睡眠時無呼吸症候群の大きな原因となるため、減量が推奨されます。
またアルコールや睡眠薬は気道周辺の筋肉を弛緩させて閉塞の原因となるため、摂取の制限や中止が必要となります。
中枢性睡眠時無呼吸症候群では、脳血管障害や心不全といった原因と思われる基礎疾患の治療が重要です。
その上で症状が改善されない場合は酸素投与やCPAP療法などの治療が行われます。
4-5.睡眠関連運動障害の治療法
睡眠関連運動障害の治療では、主に薬物療法が行われます。
睡眠関連運動障害は鉄不足に伴って生じる場合が多いため、鉄のサプリメントの摂取が主な治療となります。
また必要に応じてドーパミン作動薬や「抗てんかん薬」などの薬剤が用いられます。
カフェインには睡眠関連運動障害の症状を悪化させる可能性があることから摂取の中止が求められます。
4-6.睡眠時随伴症の治療法
睡眠時随伴症は現象ごとに治療の要否や治療法が異なります。
夜驚症は成人期までに多くが解消されるため、基本的に治療は行われません。
子どもの場合は親が安心させることが重要です。
しかしパニック状態になるようなケースでは、けがを防ぐために寝室にできるだけものを置かないといった配慮が必要となります。
成人では長時間作用する「ベンゾジアゼピン系抗不安薬」などによる薬物療法や精神療法が有効な場合があります。
睡眠時遊行症も多くの場合成人期までに改善するため、基本的に治療が行われることはありません。
しかし歩行中にけがを負うような場合は低いベッドを使用する、ドアや窓にアラームを設置する、寝室からとがったものや歩行を妨げる障害物を撤去するといった対策が取られます。
また睡眠不足を解消することや、就寝前の過度な運動やカフェインなどの刺激物の摂取を中止することで症状を抑えられる場合もあります。
悪夢障害も同様に多くの場合成人期までに改善するため、治療の対象にはならないことがほとんどです。
成人の場合はうつ病や心的外傷後ストレス障害(PTSD)といった精神疾患に伴って生じる場合が多いため、治療は主にそうした疾患に対して行われます。
レム睡眠行動障害を根治できる治療法は今のところ見つかっていません。
しかしベンゾジアゼピン系抗不安薬や抗てんかん薬などの服用で多くの場合は症状を軽減できます。
再発を防止するため、薬物療法を生涯にわたって続ける必要があります。
また寝室を共にするパートナーに危害を加える恐れがあることから、薬物療法の効果が確認されるまでは寝室を分けることが推奨されます。
加えて、寝床の近くに家具やとがったものが置かれているとけがの原因となるため、撤去する必要があります。
5.睡眠障害についてのまとめ
睡眠障害は睡眠に関する多種多様な病気の総称です。
睡眠障害には不眠症、過眠症、概日リズム睡眠覚醒障害、睡眠関連呼吸障害、睡眠関連運動障害、睡眠時随伴症などがあります。
不眠症は長期間十分に眠れないことで心身の不調や生活の質の低下が生じる病気です。
ストレスや生活習慣の乱れ、心身の病気やカフェインなどの刺激物、睡眠環境などが主な原因で、睡眠習慣の見直しや睡眠薬の処方などの治療法があります。
過眠症は夜に十分に睡眠がとれていても日中に過度の眠気で仕事などに支障を来す病気で、ナルコレプシーや特発性過眠症などが該当します。
中枢神経系の機能異常が原因で、対症療法的な治療はあるものの根治させる方法はありません。
概日リズム睡眠覚醒障害は体内時計のリズムと地球の自転周期がずれた状態で、時差や交代勤務などの社会的要因や体内時計の同調機能の異常が原因です。
治療では強い光やメラトニンを用いて体内時計の同調を促します。
睡眠関連呼吸障害は就寝中に気道がふさがれて正常な呼吸が妨げられる病気で、主に肥満や顔の骨格、飲酒や睡眠薬の使用などで就寝中に気道がふさがれることによって生じます。
圧力を掛けた空気を送り込む特殊な装置の使用や、喉や鼻の奥の部位を切除する外科手術などの治療法があります。
睡眠関連運動障害は睡眠中や睡眠の前後に不快な感覚や体がびくびく動くことによって睡眠が妨げられる病気で、多くの場合は鉄不足による貧血や腎不全などの病気が関わっていると考えられています。
治療では鉄のサプリメントによる薬物療法が行われます。
睡眠時随伴症は睡眠中に起こる望ましくない心身の異常の総称で、睡眠不足や睡眠の質の低下、精神的な問題や病気などによって生じる場合があります。
子どもの睡眠時随伴症の多くは特に治療は不要ですが、成人の場合は薬物療法などが行われます。
ご自身やパートナーの睡眠に気掛かりのある方は、ぜひこの記事の内容を参考にしてくださいね。